2026/06/15

解説

内部通報の事例10選をタイプ別に紹介。通報後の対応と企業が学ぶべきポイント

内部通報の事例10選をタイプ別に紹介。通報後の対応と企業が学ぶべきポイント

「内部通報の事例にはどのようなものがあるのか知りたい」「内部通報がどのような問題に発展するのか知りたい」と考える方は多いのではないでしょうか。内部通報は、社内の不正や法令違反、ハラスメントなどを早期に発見し、是正につなげるための重要な仕組みです。

一方で、実際の事例を見ると、不正の発覚そのものだけでなく、通報後の配置転換・減給・解雇といった人事措置や、通報者保護、事実確認の進め方が争点となり、企業リスクにつながるケースも少なくありません。

そこで本記事では、内部通報の具体的な事例を5つのタイプ別に10件紹介し、それぞれの事例から企業が学ぶべき運用上のポイントまで解説します。内部通報制度の整備や見直しを検討している企業の担当者にとって、参考になる内容です。

なお、事例の前提となる内部通報制度の全体像(公益通報者保護法の体制整備義務から2026年12月施行の改正対応まで)は、内部通報制度とは|公益通報者保護法2026年施行から実効性ある運用までの完全ガイドで体系的に整理しています。

内部通報とは?

内部通報とは、従業員や役員、退職者などが、会社内で発生している不正行為・法令違反・ハラスメントなどについて、会社が設置した社内窓口や外部委託窓口に知らせる仕組みです。窓口には、社内の管理部門に設けるものもあれば、弁護士事務所などの外部専門機関に委託するものもあります。

運用上は、ハラスメント、金銭の横領、情報漏えい、不正会計、法令違反、社内規程違反などを幅広く対象にすることがあります。ただし、公益通報者保護法上の「公益通報」として保護されるかどうかは、通報者・通報対象事実・通報先などの要件に該当するかによって判断されるため、社内相談やハラスメント相談のすべてが「公益通報」になるわけではありません。

内部通報制度が適切に機能していれば、問題が社外に広がる前に、社内で事実確認や是正対応を進めやすくなり、不正の早期発見や再発防止につなげられます。

内部告発・公益通報との違い

内部通報・内部告発・公益通報は似た意味で使われますが、通報先や法的な位置づけが異なります。事例を読むうえでの前提として、違いを簡単に整理しておきます。

内部通報社内で発生した不正行為や法令違反などを、会社が設置した通報窓口や外部委託窓口に知らせること
内部告発  企業や組織の不正を、行政機関・報道機関・SNSなど社外の第三者に知らせること
公益通報  労働者・退職者・役員などが、不正の目的ではなく、勤務先等の「通報対象事実」を、勤務先・権限のある行政機関等・被害拡大防止に必要と認められる者などに通報すること

内部通報と内部告発の主な違いは通報先にあります。内部通報は社内窓口や弁護士事務所など会社が用意した窓口へ、内部告発は行政機関や報道機関など社外の第三者へ知らせる行為です。一方、公益通報は通報先だけでなく目的や内容にも関わる考え方で、これらは完全に別物ではありません。たとえば従業員が社内窓口に法令違反を通報した場合、それは「内部通報」であり、要件を満たせば「公益通報」にも該当します。

なお、公益通報として保護される通報者には、労働者だけでなく、退職後1年以内の退職者や役員なども含まれます。さらに、2026年12月1日施行の改正公益通報者保護法では、一定の業務委託関係にあるフリーランス等も保護対象に加わる予定です。

本記事では、内部通報に関する事例を次の5つのタイプに分けて紹介します。

  • 不正発覚型:通報をきっかけに、隠れていた不正や管理体制の問題が明らかになった事例
  • 経営層関与型:役員・経営トップによる不適切な行為が通報された事例
  • 不利益取扱い型:通報後の配置転換・業務変更などの報復性が争われた事例
  • 報復・処分理由型:通報後の一連の処分の理由や報復性の有無が争点になった事例
  • 通報内容・態様型:通報内容の根拠や通報の方法が争点になった事例

不正発覚型の内部通報事例

内部通報は、通常の業務や社内チェックだけでは見つけにくい不正が明らかになるきっかけになります。現場の従業員からの通報によって、過去から続いていた不適切な処理や管理体制の問題が発覚するケースもあります。ここでは以下の2件を紹介します。

  • 下水道使用量の過少申告
  • 中国連結子会社の源泉所得税過少申告

下水道使用量の過少申告が内部通報で発覚した事例

事例の概要  施設内で迂回配管を利用して地下水を取水し、下水道使用量を実際より少なく申告していた
判断・対応  役員や店舗関係者へのヒアリング、関連資料の確認、外部専門家による調査が行われ、不正の経緯や原因が整理された

ある温浴施設で、下水道使用量を実際よりも少なく申告していたことが、従業員からの内部通報によって発覚した事例です。

この事例では、温浴施設の運営開始時に、設備や下水道料金の仕組みに対する理解が十分ではなかったことを背景に、迂回配管を使った不適切な運用が始まったとされています。その後、同様の運用が別の施設にも広がり、複数の施設で下水道使用量の過少申告につながりました。

問題となった運用自体は過去に中止されていたものの、当時は社外への報告や公表が行われていませんでした。そのため、不正がすぐに明らかになることはなく、後に従業員からの内部通報をきっかけとして発覚しています。

この事例のポイント:過去に中止した不適切な運用でも、社外への報告や是正の完了まで管理していなければリスクは残り続け、最終的に内部通報で表面化します。「中止」と「解決」は別物だといえます。

中国連結子会社の源泉所得税過少申告が内部通報で判明した事例

事例の概要  中国の連結子会社で、管理職の従業員が源泉所得税を意図的に過少申告していた
判断・対応   外部専門家による調査が実施され、過少申告の事実を確認。個人所得税の納付や、管理体制の見直しが行われた

中国の連結子会社で、源泉所得税を意図的に過少申告していた疑いが、内部通報によって判明した事例です。

この事例では、内部通報を受けて社内調査が行われ、その一環として外部専門家による調査が実施されました。調査の結果、管理職の従業員による源泉所得税の過少申告が確認され、未納となっていた税金の納付が行われています。

また、調査の過程では、根拠が不明な引当金の計上も判明しました。そのため企業側は、特定の管理職の判断に依存した管理体制を見直すとともに、業務の属人化を防ぐための担当者ローテーション制度を導入するなど、再発防止に向けた是正措置を進めています。

この事例のポイント:内部通報は単一の不正だけでなく、特定の管理職への依存や業務の属人化といった、不正を生みやすい管理体制そのものの発見にもつながります。

内部不正が発生する原因や発生パターンについては、内部不正はなぜ起きるのか。発生パターンと企業が取るべき4つの対策を解説で詳しく解説しています。

経営層に関する内部通報事例

内部通報の対象は、一般従業員による不正行為だけではありません。役員や経営層による不適切な行為についても、内部通報をきっかけに発覚するケースがあります。経営層が関係する事案は、組織全体のガバナンスやコンプライアンス体制にも大きな影響を与えます。ここでは以下の2件を紹介します。

  • 経営トップによる経費私的流用
  • 幹部によるハラスメント報告後の処分

前代表取締役社長の経費私的流用が内部通報で発覚した事例

事例の概要    代表取締役社長が、出張時の同行者に関する費用や特定の飲食店での費用を会社経費として処理していた疑いが通報された
判断・対応   監査役や社外取締役による調査後、外部専門家を含む調査委員会が設置された。代表取締役社長の辞任や、関係役員の役職変更も行われた

外部通報窓口への内部通報をきっかけに、経営トップによる経費の私的利用が疑われた事例です。

この事例では、外部窓口への通報をきっかけに、監査役や社外取締役が事実確認を行いました。その結果、当時の代表取締役社長が、少なくとも複数年にわたり、第三者が関与する特定の飲食店での費用を会社に負担させていたことが確認されています。

また、経費の支出管理に関与していた役員についても、不作為を含む関与が疑われました。企業側は事態を重く受け止め、独立性のある外部専門家と社外取締役で構成される調査委員会を設置し、さらに関係者の辞任や役職変更といった対応を行っています。

この事例のポイント:経営トップが関与する事案では社内窓口が機能しにくく、外部窓口の存在が発覚の起点になります。事実確認も、監査役・社外取締役・外部専門家など独立した主体が担えるかどうかが信頼性を左右します。

幹部のハラスメント報告後の処分が争われた事例

事例の概要   総務部長が、常務理事兼事務局長による不適切な言動について理事長に報告文書を提出
判断・対応   裁判所は、諭旨解雇は重すぎる処分であり、客観的に合理的な理由を欠くとして無効と判断。未払賃金や慰謝料の支払いも命じられた

幹部職員によるハラスメントの報告後、報告者に対する降格配転や諭旨解雇の有効性が争われました。

この事例では、総務部長が常務理事兼事務局長によるパワハラやセクハラに該当すると思われる言動について、理事長に報告文書を提出しました。その後、総務部長は降格配転され、さらに諭旨解雇を受けたため、これらの処分の有効性が争点となっています。

裁判所は、報告書の提出やその内容を漏洩したことなどを理由とする諭旨解雇について、処分として重すぎると判断しました。さらに、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上も相当とはいえないとして、解雇は権利の濫用にあたり無効であるとしています。

この事例のポイント:ハラスメントの報告を理由とする重い処分は、客観的な合理性と社会通念上の相当性を欠けば無効と判断されます。報告者への人事処分は、報復と受け取られないか慎重な検討が必要です。

内部通報後の不利益取扱いが問題になった事例

内部通報制度では、通報者を保護することが重要とされています。しかし実際には、通報後の配置転換や業務変更、解雇などが報復的な措置ではないかとして争われるケースもあります。ここでは以下の2件を紹介します。

  • 内部通報後の配置転換
  • 研修の問題点に関する内部通報

内部通報後の配置転換の有効性が争われた事例

事例の概要   従業員が、取引先従業員の雇入れについてコンプライアンス室に通報。
その後、別部署への配置転換を命じられた
判断・対応  控訴審では、最終的な異動先で勤務する義務がないことが確認され、会社側と関係者に損害賠償の支払いが命じられた

取引先従業員の雇入れに関する内部通報後、通報者に対する配置転換やその後の異動の有効性が争われた事例です。

この事例では、従業員が取引先企業の従業員の雇入れについて社内のコンプライアンス室に通報した後、別部署への配置転換を命じられました。従業員は、この配置転換が内部通報などに対する報復であり無効だと主張し、勤務義務がないことの確認や損害賠償を求めています。

一審では、配置転換には業務上の必要性があり、通報を理由にしたものとは認められないとして、従業員側の請求は棄却されました。しかし、控訴審では判断が変更され、最終的な異動先で勤務する雇用契約上の義務がないことが確認されています。

また、会社側と関係者に対して、従業員への損害賠償の支払いも命じられました。

この事例のポイント:通報後の配置転換の有効性は、業務上の必要性、不当な動機・目的の有無、労働者に生じる不利益の程度などを総合的に考慮して判断されます。通報の直後に配置転換を行う場合、企業は通報とは独立した業務上の必要性や判断過程を記録し、説明できるようにしておくことが求められます。

研修の問題点を上申した医師への報復が争われた事例

事例の概要 麻酔科医が、所属部署の問題点をセンター長へ報告。
その後、上司によって一切の手術の麻酔担当から外された
判断・対応 裁判所は、麻酔担当から外した行為は報復目的による違法な措置と認定。
慰謝料の支払いを命じた

職場の問題点を上司を通さずに報告した後、不利益な扱いを受けたとして損害賠償の支払いが請求された事例です。

この事例では、麻酔科医が所属部署の問題点についてセンター長へ上申した後、それまで担当していた手術の麻酔の割り当てを一切受けられなくなったことが問題となりました。手術の担当者を決定していたのは、問題点を指摘された部署の責任者でもある直属の上司でした。

一方で、病院側は、他病院の見学日程を考慮した結果であり、報復目的はなかったと主張しました。しかし裁判所は、上司が見学日程を容易に確認できる立場にあったにもかかわらず、確認を行わずに一切の手術の麻酔担当から外したことは不自然であると判断しています。

そのうえで裁判所は、問題点の指摘を不都合な行為と受け止めた上司が、報復として不利益な取扱いを行ったと認定しました。また、麻酔担当から外されたことと退職との間には相当因果関係があるとして、慰謝料の支払いを命じています。

この事例のポイント:人事上の措置を決める立場の者が被通報者である場合、その措置の中立性が疑われます。通報内容に関係する人物を処分の決定から外すなど、判断権限の分離が欠かせません。

通報後の報復性・処分理由が争点になった事例

内部通報制度では、通報者を保護することが重要です。しかし、通報後に行われた一連の処分について、その理由や報復性が問題になるケースもあります。ここでは、通報後の処分の理由や報復性の有無が争点となった事例を紹介します。

  • 内部通報後の配転・減給・自宅待機・解雇
  • 警察への公益通報後の減給・解雇

内部通報後の配転・減給・自宅待機・解雇が争われた事例

事例の概要   従業員が、内部通報後に配転命令、減給、自宅待機命令、解雇などを受けたとして、これらが報復行為にあたると主張した
判断・対応 配転命令や解雇は無効とされた一方、一連の行為が報復目的による違法な措置だったとは認められず、損害賠償請求は棄却された

内部通報後に行われた配転命令や減給、自宅待機、解雇などの一連の措置について、報復性の有無が争われた事例です。

この事例では、内部通報を行った従業員が、その後に配転命令や減給、自宅待機命令、解雇などを受けたとして、会社側の対応は報復行為にあたると主張しました。従業員側は、不当な動機や目的に基づく違法な措置であるとして、損害賠償を求めています。

裁判所は、配転命令について、降格に相当する職種変更と減給を伴うものであり、権利の濫用にあたるとして無効と判断しました。また、その配転命令を拒否したことなどを理由とする解雇についても無効とされています。

一方で、会社側の一連の行為が、内部通報に対する報復や不当な動機に基づく違法な措置であるとは認められませんでした。業務上の必要性が一定程度認められたことや、自宅待機中の賃金支給、解雇の撤回、復職後の配属への配慮などが考慮され、最終的に損害賠償請求は棄却されています。

この事例のポイント:個々の処分が無効でも、一連の対応が直ちに違法な報復と認定されるとは限りません。賃金支給・解雇撤回・復職配慮といった是正の積み重ねが、企業側の対応の評価を左右します。

警察への公益通報後の減給・解雇が無効とされた事例

事例の概要 従業員が、店内でパチンコ台の遊技釘が無許可で調整されている様子を撮影し、警察に告発。
その後、役職の解任や減給、解雇が行われた
判断・対応裁判所は、警察への告発は公益通報に該当すると判断。
減給処分と普通解雇処分はいずれも無効とされた

違法行為を警察に告発した従業員に対する減給処分や普通解雇処分について、公益通報者保護法の適用が争われました。

この事例では、従業員が店内でパチンコ台の遊技釘が無許可で調整されている様子を確認し、その動画とともに警察へ告発しました。その後、会社側は従業員を責任者などの役職から外して減給し、さらに営業停止後には全従業員を解雇しています。

会社側は、従業員が業務への協力を拒否したことや、経営者を排除する不正な目的で告発したことを処分理由として主張しました。しかし裁判所は、従業員が業務への協力を拒否したとは認められないと判断しています。

また、警察への告発についても、遊技釘の無許可調整が発覚した場合の処分を軽減する目的で、捜査権限を有する警察署に通報したものであり、公益通報に該当すると判断されました。そのため、告発を理由として降格や減給などの不利益な取扱いをすることは許されないと判断され、減給処分と普通解雇処分はいずれも無効とされています。

この事例のポイント:社外(警察)への通報でも公益通報に該当すれば、それを理由とする不利益取扱いは許されません。「不正な目的の告発だ」という企業側の主張は、客観的な事実で裏づけられなければ通りにくいといえます。

通報内容・通報態様が争点になった事例

内部通報では、通報したという事実だけでなく、通報内容の根拠や通報後の言動が問題になることもあります。通報内容に十分な裏付けがあるか、通報の方法が適切だったかによって、判断が分かれるケースです。ここでは以下の2件を紹介します。

  • 子会社代表者の横領・不正経理に関するグループ内報告
  • 他従業員の麻薬使用に関する内部通報

親会社への繰り返しの通報後の懲戒解雇が争われた事例

事例の概要   従業員が、子会社代表者による横領や不正経理などの疑いを親会社へ繰り返し報告した。その後、懲戒解雇処分を受けた
判断・対応  裁判所は、報告内容を真実と信じる相当な理由がなかったとして、懲戒解雇は有効と判断した

子会社代表者の不正を親会社へ報告した従業員に対する懲戒解雇の有効性が争われた事例です。

この事例では、従業員が子会社代表者による横領や不正経理などの疑いについて、親会社へ繰り返し報告していました。しかし会社側は、その行為を問題視し、従業員を懲戒解雇しています。

これに対して従業員は、解雇は無効であり、引き続き従業員としての地位を有することや賃金の支払いを求めました。しかし裁判所は、報告内容について真実であると信じるための相当な理由が認められないと判断しています。

また、報告内容には代表者の人格や職務上の公正さを疑わせるものや、犯罪行為を行っているとの指摘も含まれていたことから、裁判所は懲戒解雇に客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であると判断しました。

この事例のポイント:通報すれば常に保護されるわけではなく、内容を真実と信じる相当な理由が問われます。一方で企業側も、根拠の有無を事実確認で見極めたうえで判断する責任を負います。

他従業員の麻薬使用の通報後の解雇が争われた事例

事例の概要   従業員が、他の従業員による麻薬使用を内部通報。その後に解雇され、通報を理由とする解雇は無効だと主張した
判断・対応  裁判所は、解雇は内部通報を理由とするものではなく、その後の問題行動を理由とするものだとして、従業員の請求を棄却した

他の従業員による麻薬使用を内部通報した従業員が、その後の解雇は通報を理由とするものだとして争った事例です。

この事例では、従業員が他の従業員による麻薬使用を内部通報しました。その後、会社側は通報内容について調査を行い、麻薬使用の事実は確認できないとして、通報者にその旨を伝えています。

しかし、通報者はその後も問題行動を続けたとされ、会社側はそれを理由に解雇しました。これに対して通報者は、内部通報を理由とする解雇であり無効だと主張し、労働契約上の地位確認や賃金の支払いを求めています。

裁判所は、解雇の理由は内部通報そのものではなく、調査結果を伝えた後も問題行動を続けたことにあると判断しました。そのため、内部通報を理由とした不利益取扱いにはあたらないとして、通報者の請求はいずれも棄却されています。

この事例のポイント:解雇理由が「通報そのもの」か「通報後の問題行動」かで結論が変わります。だからこそ、通報対応と人事判断を切り分け、判断の経緯を記録しておくことが企業を守ります。

内部通報の事例から企業が学ぶべき運用上のポイント

ここまでの事例が共通して示すのは、争点になるのは不正やハラスメントの有無そのものよりも、「企業がその後どう対応したか」だということです。事実確認の進め方、通報者への対応、人事措置の妥当性が問われ、裁判にまで発展したケースも少なくありません。事例から導かれる運用上のポイントを3つに整理します。

「通報の有無」ではなく「事実確認を経て判断する」

「親会社へのグループ内報告」「他従業員の問題行為の通報」の各事例が示すように、通報の真偽は事実確認を経て初めて判断できます。通報内容だけで被通報者を処分したり、逆に「大きな問題ではない」と放置したりすると、通報者・被通報者の双方に不利益が生じる可能性があります。

重要なのは、「通報があったから処分する」のではなく「事実確認を経て判断する」という考え方です。証拠や関連資料の確認、関係者へのヒアリングといった調査手順をあらかじめ定めておくことで、双方の権利を守りながら公正な判断につなげられます。

受付から調査、是正までの具体的な進め方は内部通報の調査方法と対応手順|受付から是正・被通報者対応まで徹底解説で、社内不正全般の調査手順は社内不正調査とは?初動対応・本調査の各ステップや未然に防ぐ方法まで解説で詳しく解説しています。

通報後の人事措置は「報復と受け取られうる」前提で記録化する

「配置転換」「研修の問題点の上申」「配転・減給・解雇」の各事例が示すように、通報後の人事措置は、たとえ業務上の必要性があっても、通報者からは報復や不利益取扱いと受け止められる可能性があります。実際に裁判では、人事措置が内部通報への報復にあたるかどうかが繰り返し争点になっています。

その背景には、公益通報者保護法が不利益取扱いを禁止していることがあります。同法5条(抜粋)では、公益通報をしたことを理由として、公益通報者に対して降格、減給、退職金の不支給その他不利益な取扱いをしてはならないと定められています。

そのため、配置転換や減給などの人事措置を実施する際は、業務上の必要性・判断根拠・決定までの経緯を文書化し、内部通報の担当部署と人事部門が連携して、通報内容と人事判断を適切に切り分けて管理することが求められます。

なお、2026年12月1日施行の令和7年改正では、内部公益通報対応体制の実効性向上に加え、通報妨害・通報者探索の禁止、不利益取扱いへの抑止・救済の強化、保護対象の拡大などが予定されています。改正の全体像は公益通報者保護法 改正 企業対応ガイド|2026年12月施行・義務整備の5つの柱で整理しています。

通報者保護と被通報者の権利保護を両立する

通報者保護は重要ですが、通報内容を事実確認しないまま被通報者を加害者と決めつけることは避けるべきです。他方で、本記事の懲戒解雇が有効とされた事例のように、通報内容に真実と信じる相当な理由がない場合や、通報後の言動自体に問題がある場合には、通報者側への処分が有効と判断されることもあります。どちらか一方に偏らず、調査に必要な範囲でのみ情報を共有しながら、通報者保護と被通報者の権利保護を両立させる慎重な調査運用が求められます。

通報者の氏名だけでなく、所属部署、担当業務、通報内容との組み合わせにより公益通報者を特定させる事項についても、慎重に管理する必要があります。公益通報対応業務従事者には、正当な理由なく公益通報者を特定させる事項を漏らしてはならない守秘義務が課されます。通報をためらわせない匿名性の確保と、追加確認を可能にする仕組みの両立については、窓口の種類ごとの違いを内部通報窓口の選び方|社内・弁護士・代行・システム窓口の比較で比較しています。

なお、こうした事例の背景にある「制度が形だけで終わる」構造的な要因と、形骸化を防ぐ設計については内部通報制度の実態を最新調査で解説。形骸化を防ぐ4つの視点内部通報制度は“ある”だけでは不十分:「沈黙」を防ぐための制度設計で掘り下げています。

内部通報窓口の設置は「NaLaLys」

内部通報の事例を見ると、通報内容の聞き取り不足や記録管理の不備、通報後の対応遅れが企業リスクにつながることがわかります。内部通報制度を機能させるには、通報を受け付けるだけでなく、初動対応から記録管理までを安定して運用できる仕組みが必要です。

NaLaLysの「AI通報窓口」は、AIチャットボットが通報の一次受付とヒアリングを支援するサービスです。通報内容を5W1Hで整理し、管理ダッシュボード上で案件を一元管理できるため、担当者ごとの対応差や聞き取り漏れを減らしやすくなります。

主な特徴は以下のとおりです。

  • AIが24時間365日、通報の一次受付に対応
  • 通報内容を5W1Hで整理・可視化
  • ダッシュボードで案件の進捗や記録を一元管理
  • 記名・匿名にかかわらず通報者との継続コミュニケーションが可能
  • 国内サーバー管理・入力データの学習利用なし
  • 既存の顧問弁護士窓口との併用も可能

また、匿名通報であっても通報者との継続コミュニケーションができるため、追加確認が必要な場合にも対応しやすくなります。通報後の初動対応を標準化し、重要な事例を見逃さない体制を整えたい企業に適したサービスです。

内部通報の事例を踏まえて窓口運用を見直したい企業にとって、NaLaLysの「AI通報窓口」は有力な選択肢となります。⇨ NaLaLysのAI通報窓口に関するお問い合わせはこちら

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