2026/06/23
解説
内部通報制度でパワハラの通報を受けた企業が取る対応。制度を機能させるポイントも解説
「パワハラの通報を受けたが、どのように対応すればよいかわからない」「内部通報制度でパワハラ通報を受け付ける際の注意点を知りたい」と考える企業担当者は多いのではないでしょうか。
内部通報制度では、法令違反や不正行為だけでなく、パワハラなどのハラスメントに関する相談・通報を受け付けるケースもあります。
そこで本記事では、
- 内部通報制度とパワハラの関係
- 企業がパワハラ通報を軽視してはいけない理由
- パワハラ通報を受けたときの対応フロー
- 企業が避けるべき対応
- パワハラ通報を機能させる制度整備のポイント
について詳しく解説します。内部通報制度の見直しや、パワハラ通報への対応体制を整えたい企業担当者の参考になれば幸いです。
目次
内部通報制度とは?
内部通報制度とは、企業内の不正や法令違反などを早期に発見し、是正するための仕組みです。従業員や役員などから組織内の問題に関する通報・相談を受け付け、必要に応じて調査や是正措置を行います。
内部通報制度では、主に次のような内容を受け付けます。
- 法令違反や不正行為
- 情報漏えい
- 不適切な労務管理
- 就業規則違反
公益通報者保護法では、常時使用する労働者が300人を超える事業者に対して、内部通報に対応する体制整備が義務付けられています。300人以下の事業者についても、同様の体制整備に努めることが求められています。
内部通報制度の全体像は内部通報制度とは?公益通報者保護法2026年施行・体制整備義務から実効性ある運用までの完全ガイドで詳しく解説しています。
パワーハラスメントの定義
職場におけるパワーハラスメントは、優越的な関係を背景とした言動が、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するものを指します。
労働施策総合推進法および厚生労働省の指針では、職場におけるパワーハラスメントは、次の3つの要素をすべて満たすものと整理されています。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 優越的な関係を背景として行われること | 職務上の地位や知識・経験、集団での関係性などにより、相手が抵抗や拒絶をしにくい状況で行われる言動 |
| 業務上必要かつ相当な範囲を超えて行われること | 業務上の必要性がない、または目的や手段が社会通念上相当とはいえない言動 |
| 労働者の就業環境が害されること | 暴力、暴言、執拗な叱責、長期間の無視などにより、働くうえで看過できない支障が生じる状態 |
例えば、
- 業務上必要のない叱責を繰り返す
- 人格を否定する発言をする
- 集団で無視する
- 能力や経験に見合わない仕事を長期間与える
といった行為は、パワーハラスメントに該当する可能性があります。
ただし、客観的に見て業務上必要かつ相当な範囲で行われる指導や注意は、パワーハラスメントには該当しません。
(出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」、および職場におけるハラスメントの防止のために(厚生労働省))
ハラスメントとはどういったものなのか、具体的に何が該当するのかを理解したい方は、ハラスメントとは?三大ハラスメントの定義・言動例10選と企業の防止対策事例も参考にしてみてください。
内部通報制度でパワハラは対象になるのか
パワハラは、企業の内部通報制度やハラスメント相談窓口で受け付ける対象になることが一般的です。ただし、
- 内部通報の対象になること
- 公益通報者保護法における「公益通報」に該当すること
は別の問題です。
内部通報制度は、法令違反だけでなく、ハラスメントや不適切な労務管理など、企業が把握・改善すべき問題を広く受け付けるケースが少なくありません。そのため、多くの企業ではパワハラに関する相談や通報も受け付けています。
一方で、労働施策総合推進法は事業主にパワハラ防止措置を義務付けるものであり、パワハラ行為そのものを一律に刑事罰や過料の対象としているわけではありません。ただし、暴行、脅迫、名誉毀損、侮辱など、行為の内容によっては別途刑事責任や民事責任が問われる場合があります。
そのため、パワハラの通報が直ちに公益通報者保護法上の公益通報に該当するとは限らない点に注意が必要です。ただし、暴行や脅迫、性的な犯罪、賃金不払いや労災隠しなど、対象となる法律に規定された犯罪行為・過料対象行為等に関わる内容を含む場合には、公益通報に該当する可能性があります。
公益通報に該当するかは別途判断が必要
パワハラの通報が内部通報制度の対象であっても、公益通報者保護法上の公益通報に該当するかは別途判断が必要です。
先ほども説明したように、内部通報として受け付けることと、公益通報として法律上の保護を受けられることは同じではありません。
公益通報者保護法における公益通報の対象となるのは、
- 国民の生命
- 身体
- 財産その他の利益の保護
に関わる法律に規定された犯罪行為や過料対象行為です。具体的には、消費者庁が公表する対象法律(約500の法律)に規定された犯罪行為・過料対象行為、またはこれらにつながる行為が公益通報の対象となります。対象となる法律は随時更新されるため、最新の一覧は消費者庁の公表資料で確認する必要があります。
そのため、パワハラの事実があったとしても、内容によっては公益通報には該当しない場合があります。
ハラスメント相談窓口で対応する会社もある
会社によっては、パワハラに関する通報や相談を、内部通報窓口ではなくハラスメント相談窓口で受け付けている場合があります。
これは、パワハラが内部通報制度の対象外になるという意味ではありません。内部通報制度でどのような内容を受け付けるかは会社ごとに異なり、ハラスメントも内部通報の対象に含めることができます。
ただ、パワハラやセクハラなどは、従業員が「ハラスメントに当たるのか分からない」「正式な通報ではなく、まず相談したい」と感じるケースもあります。
そのため、相談先を分かりやすくし、早い段階で声を上げやすくするために、ハラスメント専用の窓口を別途設けている会社もあります。
企業がパワハラ通報を軽視してはいけない理由
パワハラ通報は、個人間のトラブルではなく、企業の労務管理や組織運営上のリスクとして対応する必要があります。対応を誤ると、被害の拡大につながるおそれがあるためです。
企業がパワハラ通報を軽視してはいけない理由は、主に次のとおりです。
- パワハラ防止措置義務・安全配慮義務への対応が必要になる
- 労務管理の不備を可視化する入口になる
- 管理職・役員によるパワハラは組織統治上のリスクになる
- 通報者保護を誤ると制度全体への信頼が失われる
ここからは、それぞれの理由について詳しく解説します。
パワハラ防止措置義務・安全配慮義務への対応が必要になる
企業には、職場におけるパワハラを防止するため、相談体制の整備や事後の迅速かつ適切な対応など、雇用管理上必要な措置を講じる義務があります。また、相談したことや事実確認に協力したことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
加えて、企業は従業員が安全に働けるよう配慮する義務(安全配慮義務)を負っています。パワハラ通報を放置して被害が深刻化した場合、防止措置義務違反や安全配慮義務違反として、企業の責任が問われる可能性があります。
労務管理の不備を可視化する入口になる
パワハラ通報は、部署や現場の労務管理に問題がないかを確認するきっかけになります。
パワハラは、特定の上司や従業員による言動だけで発生しているとは限りません。長時間労働、過度な業務負担、人員不足、評価の不透明さなどが背景にあり、現場管理者のマネジメント不全として表面化しているケースもあります。
例えば、パワハラの通報とあわせて、次のような問題が見つかることがあります。
- 残業時間が適切に管理されていない
- 特定の従業員に業務が偏っている
- 上司の指示が曖昧で、現場が混乱している
- 叱責や威圧的な指導が常態化している
- 相談しても改善されない雰囲気がある
このような場合、問題は個別の発言や行為だけではなく、部署全体の働き方や管理体制に及んでいる可能性があります。
そのため、企業は通報内容だけを切り取って判断するのではなく、勤怠状況や業務分担、上司と部下のコミュニケーション状況なども含めて確認することが重要です。
管理職・役員によるパワハラは組織統治上のリスクになる
管理職や役員によるパワハラは、個人の問題にとどまらず、企業のガバナンスに関わるリスクへ発展する可能性があります。
通報対象者が管理職や役員である場合、人事評価や組織運営への影響力を持っていることが多いため、通常の社内調査では公正性を疑われやすくなります。調査担当者が対象者と近い立場にある場合、「適切に調査されないのではないか」と通報者や従業員が不信感を抱くケースも考えられます。
また、問題のある言動が長期間続いていたにもかかわらず、周囲の管理職や役員が把握しながら対応していなかった場合は注意が必要です。このようなケースでは、加害者本人だけでなく、組織全体の監督体制や内部統制に問題があると判断される可能性があります。
通報者保護を誤ると制度全体への信頼が失われる
通報者の保護を誤ると、従業員が内部通報制度を信頼できなくなり、問題が社内で共有されにくくなります。
現行の公益通報者保護法でも、公益通報を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています。さらに、2026年12月1日に施行される改正公益通報者保護法では、正当な理由なく公益通報を妨げる行為や、正当な理由なく公益通報者を特定しようとする行為も禁止されます。企業が通報者探しをしたり、通報を理由に不利益な扱いをしたりすれば、従業員は「通報しても守られない」と感じやすくなります。
その結果、重大な問題が社内で把握されないまま放置され、外部通報や労働局・弁護士への相談に発展する可能性があるため注意が必要です。
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パワハラの内部通報を受けた企業が取るべき対応フロー
パワハラの通報を受けた場合は、事実確認を進めるだけでなく、通報者の保護や調査の公正性にも配慮しながら対応を進めることが重要です。
パワハラの内部通報を受けた企業は、主に次の流れで対応を進めます。
- 通報内容の緊急性とリスクを評価する
- 通報者・被害者の暫定的な保護措置を検討する
- 利害関係者を外した調査体制を組む
- 関係者ヒアリングと証拠確認を行う
- パワハラ該当性と処分・是正措置を判断する
ここからは、それぞれの対応について詳しく解説します。
1. 通報内容の緊急性とリスクを評価する
パワハラの通報を受けたら、まずは事案の緊急性やリスクを確認します。初動対応を誤ると、被害の拡大や証拠の散逸につながる可能性があるためです。
通報受付時には、主に以下の項目を整理します。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 通報対象者 | 通報対象者の氏名、所属、役職、通報者・被害者との関係など |
| 被害内容 | 発言・行為の内容、発生日時、発生場所、頻度、継続期間など |
| 証拠の有無 | メール、チャット、録音、日報、勤怠記録、目撃者の有無など |
| 緊急性 | 被害の継続状況、出勤困難の有無、心身への影響、接触回避の必要性など |
| 公益通報該当性 | 公益通報者保護法上の対象法律に規定された犯罪行為・過料対象行為、またはこれらにつながる行為に該当する可能性など |
これらの項目を整理することで、被害者保護を優先すべきか、早急に調査へ進むべきかを判断しやすくなります。特に、被害が継続している場合や通報対象者が管理職・役員である場合は、通常より慎重な初動対応が求められます。
また、通報内容によっては、公益通報に該当する可能性や犯罪行為に発展する可能性もあります。受付時点で断定する必要はありませんが、調査体制や保護措置を検討するためにも、リスクの有無を早い段階で把握しておくことが求められます。
2. 通報者・被害者の暫定的な保護措置を検討する
パワハラの通報を受けた場合は、事実確認と並行して、通報者や被害者の安全確保や接触回避を目的とした暫定的な保護措置を検討する必要があります。通報後も被害者が加害疑いのある上司や同僚と接触し続ける状態では、被害が拡大したり、精神的な負担が大きくなったりするおそれがあるためです。
また、通報したことが周囲に知られると、通報者への不利益取扱いや職場内での孤立につながる可能性もあります。
そのため、企業は次のような保護措置を検討します。
- 通報者の氏名や相談内容を共有する範囲を限定する
- 加害疑いのある人物との接触機会を減らす
- 必要に応じて、本人の意向を確認したうえで勤務場所や業務上の接触機会を調整する
- 心身の状態に応じて、産業医面談や医療機関の受診勧奨、就業上の配慮につなげる
ただし、勤務場所の変更などを行う場合は、通報者や被害者に不利益が偏らないよう注意が必要です。被害者・通報者側だけを動かすのではなく、加害が疑われる側の配置や業務分担の見直しも含めて検討することが求められます。保護を目的とした対応であっても、本人の意向を確認せずに進めると、かえって負担を与える可能性があります。
3. 利害関係者を外した調査体制を組む
パワハラ通報の調査では、通報対象者と利害関係のある人物を調査担当から外し、公正性を確保することが重要です。
調査担当者が通報対象者と同じ部署にいたり、評価・人事権限の影響を受ける立場にあったりすると、調査結果の公正性を疑われる可能性があります。
特に通報対象者が管理職や役員の場合は、調査の公正性・独立性を確保するため、事案の重大性に応じて、社外弁護士や外部専門家への相談、社外窓口の活用などを検討することが望まれます。重大な組織的問題が疑われる場合には、第三者委員会などの設置を検討することもあります。

また、調査者は当事者の所属部署とは異なる部署の担当者にするなど、できるだけ中立的な立場の人物を選ぶことが望まれます。具体的な調査方法に決まった形式はありませんが、通報者が特定されないよう、質問内容や調査対象者の選び方には注意が必要です。
4. 関係者ヒアリングと証拠確認を行う
調査体制を整えたら、関係者へのヒアリングや証拠確認を通じて、通報内容の事実関係を確認します。
ヒアリングでは、通報者、被害者、通報対象者、目撃者などから話を聞きます。ただし、質問の仕方によっては通報者が特定されたり、職場内で犯人探しのような雰囲気が生まれたりするおそれがあります。そのため、関係者に確認する際は、次のような点に注意が必要です。
- 通報者を推測できるような質問をしない
- 必要以上に通報内容の詳細を共有しない
- 関係者に口外しないよう伝える
- ヒアリング内容や日時を記録する
また、メールやチャット、勤怠記録、業務指示の履歴なども重要な確認材料になります。関係者の証言だけに頼らず、客観的な資料と照らし合わせながら事実関係を整理することが重要です。
5. パワハラ該当性と処分・是正措置を判断する
調査結果を整理したら、パワハラに該当するかを判断し、必要に応じて処分や是正措置を検討します。
まずは、確認できた事実をもとに、パワハラの要件に当てはまるか、就業規則上の懲戒対象になるか、指導や配置転換などで対応できるかを判断することが求められます。通報受付時点で公益通報に該当する可能性を確認していても、調査の結果、法令違反までは認められないと判断される場合もあります。
一方で、パワハラの事実が確認できた場合は、被害の程度や行為の悪質性、継続性、再発可能性などを踏まえて対応を決めます。必要に応じて、ハラスメント委員会や人事部門などに案件を移管し、就業規則に基づく処分や再発防止策を検討することも必要です。
具体的な措置としては、次のような対応が考えられます。
- 行為者本人への厳重注意や指導
- 懲戒処分の検討
- 配置転換や職務分担の見直し
- 管理職や役職者への注意喚起
- 再発防止研修の実施
- 被害者への継続的なケア
また、暴行や脅迫など犯罪行為に当たる可能性が確認された場合は、速やかに被害拡大を防止するとともに、必要に応じて弁護士や関係機関と連携しながら法的対応を検討することが求められます。
処分や是正措置を実施した後も、同様の問題が再発していないか、被害者が安心して働ける状態になっているかを確認することが重要です。
パワハラの通報を受けたときなどに調査をどのように進めるかは、ハラスメント調査の進め方を6ステップで解説。調査におけるポイントと注意点も解説で詳しく解説しています。
パワハラの通報で企業が避けるべき対応
パワハラの通報を受けた企業は、事実確認を進めるだけでなく、不適切な対応によって二次被害や信頼低下を招かないよう注意が必要です。初動対応を誤ると、通報者の保護を損なうだけでなく、企業側の責任が問われる可能性もあります。
具体的には、以下のような対応は避けるべきです。
- 通報者探しをする
- 感情的な対立として処理する
- 通報された側の弁明機会を設けない
- 通報者・被害者に不利益となる配置転換を一方的に行う
- 必要以上に関係者へ通報内容を共有する
- 証拠保全をしないまま通報対象者へ詳細を伝える
ここでは、これらの対応を避けるべき理由を解説します。
通報者探しをする
通報者を特定しようとする行為は避けなければなりません。通報者探しが行われると、従業員が報復や不利益取扱いをおそれて通報をためらうようになり、内部通報制度そのものが機能しなくなるおそれがあります。
特に公益通報については、正当な理由なく通報者を特定することを目的とした行為が禁止されています。
また、令和7年(2025年)6月に公布された改正公益通報者保護法では、事業者が従業員に対して「公益通報をしない」といった誓約書を書かせるなど、正当な理由なく公益通報を妨げる行為が禁止されることになりました。これらの規定は令和8年(2026年)12月1日に施行されます(参考:公益通報者保護法と制度の概要(消費者庁))。施行後は、公益通報をしないことを求める合意など、公益通報を正当な理由なく妨げる内容の合意等は無効とされます。
パワハラ通報が公益通報に該当するかどうかにかかわらず、企業は、通報者の保護に十分配慮しつつ、通報対象者の弁明機会や調査の公正性も確保しながら対応する必要があります。通報者探しは調査への協力を得にくくするだけでなく、制度への信頼低下にもつながるため避けるべきです。
感情的な対立として処理する
パワハラ通報を単なる人間関係のトラブルとして片付けるべきではありません。「相性が悪いだけ」「部下の受け取り方の問題」と判断して調査を行わない場合、企業の対応不足が問われる可能性があります。
パワハラに該当するかどうかは、当事者の主観だけで決まるものではありません。
- 行為の内容や頻度
- 業務上の必要性
- 当事者間の関係性
などを踏まえ、客観的に判断する必要があります。
また、通報内容を十分に確認しないまま個人間の感情的な対立として処理すると、被害の継続や深刻化を招くおそれがあります。
企業には従業員が安全に働ける環境を整える責任があるため、たとえ小さなトラブルに見えても、事実関係を確認したうえで適切に対応することが重要です。
通報された側の弁明機会を設けない
通報内容だけをもとに、一方的にパワハラと認定することは避けるべきです。調査の公正性を確保するためには、通報対象者にも事実確認や弁明の機会を与える必要があります。
パワハラ調査では、通報者や被害者から話を聞くだけでなく、通報対象者の説明も確認したうえで事実関係を整理することが重要です。十分な聞き取りを行わないまま処分を決定すると、判断の妥当性が疑われる可能性があります。
また、通報対象者への確認は、単に反論の機会を与えるためだけではありません。認識の違いや事実関係の補足情報が得られる場合もあり、より正確な判断につながります。
ただし、弁明の機会を設ける際も、通報者が特定されないよう配慮しなければなりません。通報者保護と調査の公正性の両方を意識しながら対応することが求められます。
その他に避けるべき対応
上記のほか、初動段階では次のような対応も二次被害や証拠の散逸につながるため避ける必要があります。
- 通報者・被害者に不利益となる配置転換を一方的に行う:保護を理由とする場合でも、本人の意向を確認せずに進めると不利益取扱いと受け取られかねません。
- 必要以上に関係者へ通報内容を共有する:共有範囲が広がるほど通報者の特定リスクが高まり、二次被害を招きます。
- 証拠保全をしないまま通報対象者へ詳細を伝える:メールやチャットなどの証拠が改ざん・削除されるおそれがあるため、証拠保全を先に行うことが重要です。
パワハラ通報を機能させる内部通報制度の整備ポイント
パワハラ通報を適切に把握し、早期に対応するためには、内部通報制度を利用しやすい形で整備することが重要です。
パワハラ通報を機能させるためには、主に次のようなポイントを意識する必要があります。
- 社外に受付窓口(外部相談窓口)を設ける
- 匿名通報でも調査できる運用にする
- 管理職・窓口担当者向けにパワハラと通報対応の研修を行う
ここではこれらのポイントについて解説します。
社外に受付窓口(外部相談窓口)を設ける
パワハラ通報を機能させるには、社内窓口だけでなく、社外に受付窓口(外部相談窓口)を設けることも有効です。ここでいう社外窓口とは、社外弁護士や外部委託先などが受付を担う社内向けの相談窓口を指し、公益通報者保護法上の行政機関・報道機関等への「外部通報」とは異なります。
パワハラは、上司との関係や人事評価、職場内の人間関係に直結しやすい問題です。そのため、社内窓口だけでは「相談したことが知られるのではないか」「不利益を受けるのではないか」と不安を感じ、通報をためらう従業員もいます。
こうした不安を減らす方法の一つが、社外受付窓口の設置です。社外から相談できる窓口があれば、通報者の心理的な負担を軽減しやすくなります。特に、管理職や経営層が関与する問題も拾いやすくなり、社内だけでは把握しにくいリスクの早期発見につながります。
ただし、社外に受付窓口を設ける場合は、受付後に社内の誰へどこまで共有されるのか、匿名で相談できるのか、窓口担当者の守秘義務や利益相反をどのように管理するのかを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。これらが不明確なままでは、窓口を設けても通報者の安心感につながりにくくなります。
匿名通報でも調査できる運用にする
パワハラ通報を受け付ける際は、匿名通報でも一定の調査を進められる運用にしておくことが重要です。
匿名通報は、通報者の心理的な負担を下げられる一方で、情報が不足しやすく、事実確認が難しくなる場合があります。かといって実名での通報を求めすぎると、通報自体をためらう従業員が増える可能性があります。
そのため、匿名でも追加確認ができる仕組みを整えておくことが重要です。具体的には以下のような仕組みです。
- 双方向のやり取りができる匿名チャット型窓口の導入(通報者の匿名性を保ちながら担当者と継続的なやり取りができる)
- 通報 ID(受付番号)を付与し、匿名のまま追加の質問・確認ができる仕組み
- 第三者(外部窓口・社外弁護士等)を経由した追加照会
AI通報窓口では記名・匿名を問わず継続的なやり取りが可能なため、匿名通報でも担当者と継続してコミュニケーションを取ることができます。

匿名通報を「調査できないもの」として扱うのではなく、限られた情報から事実確認につなげられる運用を整えておくことが、制度の利用しやすさにつながります。
管理職・窓口担当者向けにパワハラと通報対応の研修を行う
管理職に対して、パワハラ防止と通報対応に関する研修を実施することも重要です。
管理職はパワハラの加害者になり得る立場である一方、部下から最初に相談を受ける一次対応者でもあります。そのため、パワハラの定義や具体例だけでなく、相談を受けた際の適切な対応方法についても理解しておく必要があります。
例えば、研修では次のような内容を取り上げることが有効です。
- 通報内容を誰に共有すべきか
- 通報者に対して言ってはいけないこと
- 通報者へ接触を控えるべき場面
- 通報を受けた際の報告ルート
- 通報者保護の重要性
など
また、研修の対象は管理職だけにとどまりません。内部通報窓口やハラスメント相談窓口の担当者には、通報者を特定させる情報の管理、利益相反の回避、ヒアリング記録の作成方法など、実務に即した研修を行うことが重要です。特に、公益通報対応業務従事者として指定された担当者には守秘義務が課されるため、通報者の特定につながる情報の取り扱いには十分な注意が必要です。
管理職や窓口担当者の対応次第で、通報者が安心して相談できるかどうかが大きく変わります。内部通報制度を機能させるためにも、制度の内容だけでなく、実際の対応方法まで含めた研修を継続的に実施することが求められます。
内部通報制度を形だけで終わらせないための設計については、内部通報制度は”ある”だけでは不十分:「沈黙」を防ぐための制度設計で詳しく解説しています。
パワハラ通報・ハラスメント相談窓口の運用なら「NaLaLysのAI通報窓口」
内部通報制度は、設置するだけでなく、従業員が安心して相談できる環境と、適切に対応できる運用体制を整えることが重要です。特にパワハラのような問題は、通報者保護や迅速な初動対応が求められるため、窓口の実効性が制度全体の機能を左右します。
一方で、実務では「担当者が他業務と兼務している」「受付内容の整理に時間がかかる」「夜間や休日の通報に対応できない」といった課題を抱えている企業も少なくありません。こうした状況では、通報対応の遅れや対応漏れが発生するリスクがあります。

NaLaLysのAI通報窓口は、AIチャットボットが通報の一次受付からヒアリングまでを支援するサービスです。24時間365日対応できるため、深夜や休日の通報も受け付けやすく、担当者の負担軽減にもつながります。
主な特徴は以下のとおりです。
- AIが24時間365日、通報の一次受付に対応
- 通報内容を整理・可視化
- ダッシュボードで案件を一元管理
- 記名・匿名を問わず継続的なやり取りが可能
- 国内サーバー管理・入力データの学習利用なし

担当者がすべての通報内容を一から整理する必要がないため、重要度の高い案件の確認や調査に集中しやすくなります。人事・コンプライアンス部門の負担を抑えながら、内部通報制度やハラスメント相談窓口の運用品質を高めたい企業にも適しています。
内部通報制度を実際に機能する仕組みとして運用するにあたり、NaLaLysのAI通報窓口の活用が選択肢の一つとなります。
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