2026/06/29

解説

内部通報・内部告発・公益通報の違いを解説。通報先と保護を整理

内部通報・内部告発・公益通報の違いを解説。通報先と保護を整理

内部通報・内部告発・公益通報の違いは、主に通報先・法律上の位置づけ・保護を受けるための要件にあります。「内部通報」「内部告発」「公益通報」という3つの言葉は、ニュースや日常の会話ではほぼ同じ意味で使われがちです。しかし、この3語は法的な位置づけ・通報先・保護のされ方の点で明確に異なります。同じ1件の問題でも、それがどこに届き、通報した人がどう守られるかは、どの枠組みに当たるかによって変わってきます。本記事では、まず3語の違いと関係を整理し、それぞれの意味を順に解説したうえで、早見表で一望できるようにまとめます。最後に、外部への内部告発に発展する前に、企業が内部でどう受け止めるべきかという実務の視点まで触れていきます。

内部通報・内部告発・公益通報の違いと用語の関係を整理

細かな定義に入る前に、まず3語を「どこに届くか」という届け先で大づかみに把握しておくと、混乱を避けやすくなります。3つの言葉は、おおまかに次のように整理できます。

  1. 内部通報 — 従業員などが、組織内の窓口や上長といった社内に向けて問題を知らせること。組織の中で受け止め、是正する機会を残す仕組みです。
  2. 内部告発 — 組織の不正を、行政機関・報道機関・SNSなど社外や公の場へ表面化させることを広く指す一般的な言葉です。法律上の正式な用語ではありません。
  3. 公益通報 — 公益通報者保護法という法律に基づき、一定の要件を満たした通報を指します。通報先が社内か社外かにかかわらず、要件を満たせば法律上の保護の対象となりうる類型です。

この3語の違いを見分ける軸は、大きく次の3つに整理できます。1つ目は「通報先」(どこに届くか)、2つ目は「法的な位置づけ」(法律上の用語かどうか)、3つ目は「保護のされ方」(通報した人がどう守られるか)です。本記事の以降のセクションは、この3つの軸に沿って各用語を解説していきます。

それでは、なぜこの3語はこれほど混同されるのでしょうか。最大の原因は、日常語としての「内部告発」が、制度上の言葉である「内部通報」や「公益通報」までも飲み込む形で広く使われている点にあります。報道で「社員が内部告発した」と表現される事案の中には、実際には社内窓口への内部通報だったものや、法律上の公益通報に当たるものが含まれていることが少なくありません。言葉の輪郭があいまいなまま使われることで、3語は同じものとして受け取られやすくなっています。

混同が起きやすいのは、おおむね次のようなパターンです。

  • 社内窓口に通報しただけの事案を、外部への「内部告発」と同一視してしまう
  • 公益通報者保護法による保護を、社外に出した場合にだけ働くものと誤解してしまう
  • 「内部通報」と「内部告発」を、単に通報先が違うだけの同じ行為として扱ってしまう

ここで押さえておきたいのは、3語が互いに排他的な関係ではなく、重なり合う関係にあるという点です。同じ1件の通報が、経路によっては内部通報であると同時に公益通報でもありうる、ということが起こります。内部告発はそのうち、社外や公の場に問題を表面化させる行為を広く指す一般語と位置づけられます。つまり「内部通報か公益通報か」のような択一ではなく、「届け先」と「保護の枠組み」という別々のものさしが重なっている、と捉えると整理しやすくなります。3語のうちどれが当てはまるかは「内側か外側か」という一軸だけでは決まらず、法律上の要件という別の軸を加えて初めて判断できる構造になっています。

この3語の区別は、単なる言葉の整理にとどまらず、企業側の実務的な備えの方向性に直接影響します。同じ1件の通報事案であっても、それが社内の内部通報として届くのか、社外の報道機関や行政機関への内部告発として表面化するのか、あるいは法律上の公益通報の要件を満たすのかによって、企業が取るべき対応と想定すべきリスクが変わってきます。社内に届いた段階であれば自ら調査・是正できますが、社外に出た段階では対応の主導権を保ちにくくなります。また、公益通報の要件を満たす通報だった場合、通報者への不利益な取扱いが法律上の問題となりうるため、対応の誤りが二次的なリスクを生みます。だからこそ、企業にとって大切なのは、ある通報を「どう呼ぶか」ではありません。その通報が「どこに届きうるか」、そして社内で受け止められなかったときに何が起こりうるかを見据えて備えることです。次のセクションからは、3語をそれぞれ詳しく見ていきます。

内部通報とは

内部通報とは、従業員・役員・退職者など、組織の不正を知り得る立場の人が、組織内に設けられた窓口や上長などに対して、組織内で起きている法令違反や不正の疑いを知らせる行為や、その仕組みを指します。社外に表面化させる前に、まず組織の内側で問題を共有する点が特徴です。

内部通報の主な通報経路

通報の届け先は社内に限られるわけではなく、いくつかの経路が想定されます。代表的なものは次のとおりです。

  • 社内に設置された通報窓口(コンプライアンス部門・監査部門など)
  • 直属の上長や、その上位の管理職
  • 企業が外部の事業者に委託して設けた社外窓口(法律事務所や専門事業者など)

このうち社外窓口の設置や匿名での受付は、通報のしやすさを高める実務上の工夫として有効です。ただし、社外窓口や匿名受付そのものが一律の法的義務というわけではありません。常時使用する労働者が301人以上の事業者には、公益通報に適切に対応するための体制整備義務が令和2年改正(2022年6月施行)で課されています。自社の規模やリスクに応じて、どこまで整えるかを検討していくことが望まれます。

内部通報の最大の狙いは、問題が外部に表面化する前に、組織が自ら気づいて是正する機会を確保することにあります。早い段階で社内に情報が届けば、被害が広がる前に調査や改善に着手できます。逆に、社内で受け止める仕組みが弱いと、問題を抱えた人が社外へ向かう動機が高まりやすくなります。

内部通報が機能するための前提

ただし、通報窓口を設けるだけでは、内部通報が実際に機能するとは限りません。通報が機能するためには、少なくとも「通報しても報復されない」という安心感が通報者に伝わっていること、窓口に届いた声が放置されずきちんと処理されること、そして通報者がどの経路を使えばよいかを把握していることが前提になります。逆に言えば、制度が「あるだけ」で機能しない典型的なパターンは、窓口の存在が従業員に十分に周知されていない場合、通報しても何も変わらないという経験や噂が社内に広まっている場合、そして上長への通報経路しかなく、当の上長が関与している問題を申告しにくい構造になっている場合です。これらのいずれかに当てはまると、問題を知っている人が社外へ向かうか、あるいは誰にも声を上げず沈黙するかという選択を迫られやすくなります。

なお、内部通報制度を実際にどう作るか、どのような手順で導入していくかについては、本記事では深入りしません。制度設計の具体的な進め方は内部通報制度の作り方で詳しく解説しています。

内部告発とは(外部公表・SNSを含む一般語)

内部告発とは、組織内部で起きている不正や問題を、行政機関・報道機関・SNS、場合によっては関係先など、組織の外部や公の場に問題を表面化させる行為を広く指す一般語です。ここで押さえておきたいのは、「内部告発」は法律上の正式な用語ではなく、社会で慣用的に使われている言葉だという点です。法律の条文に「内部告発」という言葉が定義されているわけではありません。

ただし、法律上保護される外部通報に当たるかどうかは通報先や要件によって異なります。

内部告発の主な通報先

内部通報との大きな違いは、通報先が社外に向かう点にあります。内部告発で想定される届け先は、おおむね次のように広がります。

  • 監督官庁や行政機関などの公的な窓口
  • 新聞・テレビ・ネットメディアなどの報道機関
  • SNSや個人のブログなど、不特定多数が閲覧できる場
  • 場合によっては取引先や業界団体など、組織の外側にいる関係者

内部告発に伴うリスク(通報者・企業)

このように外部へ向かう行為であるため、内部告発には個人と企業の双方にとってのリスクが伴います。まず、通報した人(通報者)の側のリスクから整理します。

  • 通報したことを理由とする不利益な取扱い(配置転換・降格・解雇など)を受ける懸念がつきまといます。一定の要件を満たす通報であれば法律上の保護の対象となりうる一方、要件や経路によっては十分に保護されない場合もあります。「外部に出せば必ず守られる」とは限らない点に注意が必要です。
  • 公表した内容が事実と異なっていた場合、名誉毀損などの形で逆に責任を問われる可能性も否定できません。

一方で、企業の側にも次のようなリスクが生じます。

  • 報道やSNSで一気に拡散すると、レピュテーション(社会的評価)への打撃が大きく、いったん広まった情報は回収が難しいという不可逆性があります。一度SNSに公開された情報は削除しても検索やスクリーンショットで残り続けることがあり、企業側からの是正は極めて困難です。
  • 社内で把握する前に外部から指摘される形になると、事実確認や調査の主導権を企業が握りにくくなり、初動が後手に回りやすくなります。

外部への内部告発が起きるまでには、多くの場合、一定の経緯があります。最初から報道機関やSNSへ向かうケースは実際には少なく、社内で声を上げたものの受け止めてもらえなかった、あるいは社内に安心して声を上げられる場がなかった、という経緯を経て外部に向かうことが少なくありません。さらに近年は、監督官庁や行政機関への通報と報道機関への情報提供を並行して行うケースや、SNSで先に問題を公表してしまうケースも見られます。SNSへの公表は、監督官庁への通報や内部窓口への申告と異なり、通報内容の精査や本人確認のプロセスを経ないまま不特定多数に届くため、企業にとっては初動対応が難しく、風評被害が拡大しやすい経路の一つといえます。

なお、内部告発が「リスクの大きい行為」であるからといって、声を上げること自体が否定されるべきではありません。問題は、その声をどこで受け止めるかにあります。言い換えれば、外部への表面化は「社内で受け止めきれなかった結果」として生じやすい構造を持っています。この視点は、後半の「企業が内部で受け止める実務」のセクションで改めて取り上げます。

公益通報とは(公益通報者保護法で保護される通報)

公益通報とは、公益通報者保護法(条文はe-Gov法令検索で参照できます)に基づき、労働者等が、不正の目的でなく、役務提供先等に関する一定の法令違反行為などを、法律上定められた通報先へ知らせる行為を指します。前述の内部通報や内部告発が「どこに届くか」という届け先に着目した言葉であるのに対し、公益通報は「法律によって保護されるかどうか」という保護の枠組みに着目した概念である点が、大きな違いです。

公益通報になりうる3つの通報先

ここがもっとも誤解されやすいところですが、公益通報は社外への通報だけを指すものではありません。社内の窓口への通報であっても、外部の行政機関への通報であっても、法律上の要件を満たせば公益通報に当たりうるという考え方が基本になります。公益通報になりうる通報先は、消費者庁「公益通報者保護制度」の解説でも整理されているとおり、おおまかに次の3つの類型に分けられます。

  • 事業者内部(自社の通報窓口など、組織の内側)
  • 権限を持つ行政機関(通報内容を所管する官庁など)
  • その他の外部(報道機関や消費者団体など、被害の拡大防止に必要と認められる先)

この3類型は、それぞれ保護を受けるための条件が異なります。社内への通報(事業者内部)であれば比較的要件が緩やかとされる一方、行政機関への通報、さらにその他の外部への通報と、通報先が社外に向かうほど保護を受けるための条件が加重される構造になっています。「外に出さないと守られない」という直感とは逆に、まず社内での申告が保護の入口として位置づけられている点が、この制度の特徴のひとつです。

公益通報の保護内容

公益通報の保護のされ方の骨子は、要件を満たした通報をしたことを理由に、解雇が無効とされ、降格・減給などの不利益な取扱いが禁止され、派遣契約の解除が無効とされ、事業者から通報者への損害賠償請求が制限されることなどにあります。

不利益取扱いの主な例:

  • 解雇・降格・減給
  • 不利益な配置転換・退職金の減額
  • 退職の強要・自宅待機命令
  • 専ら雑務に従事させること など

これにより、通報者が安心して声を上げられる環境を法律の側から支えようとしています。ただし、どの通報先に出すかによって保護を受けるための要件が異なるため、「通報すれば一律に同じ保護を受けられる」わけではありません。この「通報先によって保護のされ方が変わる」という点こそが、内部通報・内部告発との違いを理解するうえで核心になります。

企業が誤解しやすいポイントとして、「社外に出た通報は必ず公益通報になる」あるいは「社外に出なければ公益通報にはならない」という思い込みがあります。実際には、社内通報であっても法律上の要件を満たせば公益通報となりうる一方、社外への通報であっても要件を満たさなければ保護の対象外となる場合があります。また、通報対象となる事実が法律の定める「公益通報対象事実」に当たるかどうかも判断を要する点であり、通報さえあれば自動的に保護が発動するわけではありません。これらの誤解が生じると、通報への対応を誤って二次的なリスクを招く可能性があります。

公益通報の対象となる事実

公益通報の対象は、あらゆる社内トラブルや不満ではなく、対象となる法律に定められた犯罪行為・過料対象行為、またはこれらにつながる法令違反行為などに限られます。そのため、通報内容が公益通報対象事実に当たるかは個別の確認を要します。

2026年12月施行の改正と体制整備義務

常時使用する労働者が300人を超える(301人以上の)事業者には、公益通報に適切に対応するための体制整備義務が、令和2年改正(2022年6月施行)によりすでに課されています。さらに2026年12月1日には令和7年改正法が施行され、通報妨害・通報者探索の禁止、通報後一定期間内の解雇・懲戒に関する推定規定、一定の違反への刑事罰、フリーランスの保護対象化などが加わります(改正の概要は消費者庁「公益通報者保護法の概要」で公表されています)。

もっとも、保護を受けるための具体的な要件や、改正で何がどう変わるのかといった詳細は、本記事の範囲を超えます。これらは公益通報者保護法 改正への企業対応ガイドで体系的に解説しているため、自社の体制整備を検討する際にはあわせて参照することが望まれます。

3者の違い早見表と通報先による保護のされ方

ここまで解説した3軸(通報先・法的位置づけ・保護のされ方)に、企業視点の含意を加えた4観点で整理します。自社で起きた通報がどれに当たるかを判断する際の手がかりとして活用できます。

観点内部通報内部告発公益通報
通報先社内窓口・上長・会社が指定した外部窓口など、事業者内部の対応ルートとして設けられた窓口行政機関・報道機関・SNS、場合によっては関係先など、組織の外部や公の場社内・行政機関・その他外部のいずれもありうる(要件次第)
法律上の位置づけ「内部通報」自体は制度・実務上の概念。ただし公益通報者保護法上は、事業者内部への通報が「内部公益通報」として位置づけられる場合がある法律上の定義はない(一般語)公益通報者保護法に定義のある法律上の類型
保護のされ方社内規程や運用による保護に加え、公益通報者保護法の要件を満たす場合は法律上の保護の対象となる要件・経路によって法律上の保護を受けられる場合とそうでない場合がある要件を満たせば、不利益な取扱いの禁止など法律上の保護の対象となりうる
企業にとっての意味外部に表面化する前に、自ら是正できる機会主導権を失いやすく、レピュテーションへの影響が大きい通報先ごとに求められる対応と保護の水準を踏まえた体制整備が要る

内部通報と内部告発の違い

内部通報と内部告発の違いは、主に届け先が社内か社外かという点にあります。内部通報は組織の内側に情報を届け、企業が自ら調査・是正できる余地を残します。一方、内部告発は行政機関・報道機関・SNSなど外部へと向かうため、情報が広まった後に企業が主導権を取り戻すことは難しくなります。社内通報が先行すれば是正までの猶予が確保されますが、外部からの問い合わせが先行した場合にはその猶予はほぼゼロになります。

内部通報と公益通報の違い

内部通報と公益通報は、着目する軸が異なります。内部通報は「届け先が社内か否か」という経路の概念であるのに対し、公益通報は「法律上の要件を満たしているか否か」という保護の枠組みの概念です。そのため、社内窓口への通報であっても、公益通報者保護法の要件を満たせば公益通報に当たりえます。つまり、1件の通報が内部通報であると同時に公益通報でもありうるという構造になっており、どちらかを選ぶ関係ではありません。

この表を横断して読むと、通報先が社内から社外へと外に向かうほど、企業がその情報をコントロールできる余地が小さくなる傾向が見えてきます。社内窓口に届いた段階であれば、企業は自ら調査し、是正し、対外的な説明の準備も整えられます。しかし、いったん報道やSNSへ表面化してしまうと、事実確認や情報発信の主導権を企業が握ることは難しくなります。

内部告発に発展する前に — 企業が内部で受け止める実務

内部告発の項で触れたとおり、外部への表面化の多くは社内で受け止めきれなかった結果として起こります。だからこそ、内部で確実に受け止める仕組みが、企業を守る最初の備えになります。3語の違いを学ぶ意味は、外部への内部告発という形で問題が表面化する前に、社内の内部通報でいかに受け止めるか、という設計に投資できる点にあります。

社内で問題を受け止めるために企業に求められることは、おおむね次の3点に整理できます。

  1. 窓口の実効性 — 通報窓口が形式的に存在するだけでなく、実際に声を上げやすく、届いた通報がきちんと処理される状態を保つこと。社外窓口や複数の通報経路、匿名での受付は、これを高める実務上の工夫として推奨されます(いずれも一律の法的義務ではなく、自社のリスクに応じて検討する位置づけです)。声を上げやすさとは、窓口の手続きが簡便かどうかという技術的な問題だけでなく、「この窓口に届けても安全だ」という心理的な安心感が根拠になります。窓口の存在だけを告知しても、過去に通報した人が不利益を受けたという経験が社内に広まっていれば、窓口は機能しません。
  2. 通報者の保護 — 通報したことによる不利益な取扱いが起きないよう、運用と規程の両面で守る姿勢を明確にすること。守られないと感じられた瞬間に、声は社内ではなく社外へ向かいやすくなります。通報者保護は「違反があれば懲戒する」という規程の整備にとどまらず、通報案件を知りうる立場の関係者(管理職・調査担当者など)に対して、日常的に保護の重要性を伝え続けることが実効性を支えます。
  3. 初動の早さ — 通報が届いてから対応に着手するまでの時間を短くすること。初動が遅れるほど、通報者の不信が高まり、問題の把握や是正が遅れるおそれがあります。通報の受付から一定期間内に「受領した・対応を始めた」という通知を通報者に返す運用があるだけでも、「届けた声が無視されていない」という感覚を通報者に与え、社外への表面化を抑える一助となります。

匿名での通報をどう受け止めるかについては匿名通報への対応で詳しく解説しています。

ここで見落とされやすいのが、制度が「あるだけ」では受け止めきれない、という点です。窓口を設置しても、使われなければ、あるいは届いた声が放置されれば、通報者は次に社外を選びます。制度の存在そのものではなく、実際に機能しているかどうかが問われます。

これら3つの要件(窓口の実効性・通報者の保護・初動の早さ)を支える手段の一つとして、テクノロジーの活用も広がっています。NaLaLys では、AIを活用した通報窓口であるAI通報窓口を提供しており、声を上げにくさを和らげ、社内で早く受け止めるための手段として位置づけています。どのような手段を選ぶにしても、外部に向かう前に社内で受け止める、という考え方が出発点になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 内部通報と内部告発は同じ意味ですか。
A. 同じではありません。内部通報は社内の窓口や上長など組織の内側に問題を知らせる行為を指すのに対し、内部告発は行政機関・報道機関・SNSなど社外や公の場へ表面化させることを広く指す一般語です。届け先が内側か外側かが大きな違いになります。

Q. 内部通報すれば公益通報者保護法で守られますか。
A. 一定の要件を満たせば、社内への通報であっても公益通報として法律上の保護の対象となりうる場合があります。ただし、通報先や通報内容によって保護を受けるための要件が異なるため、一律に守られるわけではありません。詳細は前述の保護要件の解説で触れたとおりです。

Q. 匿名でも通報できますか。
A. 匿名での受付は、通報のしやすさを高める工夫として実務上有効です。ただし、すべての企業に一律で課された法的義務というわけではありません。匿名通報の具体的な受け止め方については、関連コラム『匿名通報への対応』で詳しく解説しています。

Q. 社外(報道・SNS)に出す前に、社内でできることはありますか。
A. あります。外部への表面化の多くは、社内で受け止めきれなかった結果として起こります。鍵となるのは、通報窓口の実効性、通報者の保護、そして通報が届いてから対応に着手するまでの初動の早さを整えることです。本記事の「企業が内部で受け止める実務」のセクションでも、この3点を具体的に取り上げています。

Q. 公益通報と内部告発は同じですか。
A. 必ずしも同じではありません。公益通報は、法律上の要件を満たした通報を指す概念であり、社内への通報も含まれます。内部告発は社外への表面化を広く指す一般語であるため、両者は重なる場合もあれば重ならない場合もあります。社外に出た通報が要件を満たせば公益通報にもなりうる一方、要件を満たさなければ公益通報には当たりません。また、社内への通報が公益通報の要件を満たす場合もあります。

Q. 内部告発は違法ですか。
A. 内部告発そのものが直ちに違法になるわけではありません。ただし、公表内容が虚偽であったり、必要な範囲を超えて秘密情報を公開したりした場合には、名誉毀損や秘密保持義務違反などが問題となる可能性があります。公益通報者保護法上の保護を受けられるかどうかは、通報内容・通報先・通報方法などの要件によって異なります。

Q. 退職後でも通報した人は保護されますか。
A. 公益通報者保護法では、退職後1年以内に通報した退職者も一定の要件を満たせば保護の対象となります。派遣労働者であった者も、派遣労働終了から1年以内の通報が対象となり得ます。退職者・役員を保護対象とする規定は令和2年改正で導入されたもので、2026年12月1日施行の令和7年改正ではフリーランスも新たに保護対象に加わります。詳細は公益通報者保護法 改正への企業対応ガイドで解説しています。

まとめと関連コラム

「内部通報」「内部告発」「公益通報」は混同されがちですが、(1) 通報先(社内か社外か)、(2) 法律上の位置づけ(一般語か法律上の類型か)、(3) 保護のされ方(社内規程によるか法律によるか)という3つの軸で見ると、明確に区別できます。そして、これらは互いに重なり合う関係にあり、同じ通報が経路次第で内部通報でも公益通報でもありうる点が、混同を生む背景にあります。

3語の区別を理解したうえで、企業に求められるのは制度上の言葉を正確に使い分けることにとどまりません。問題が外部に表面化する前に、社内でその声を受け止めるための窓口・通報者保護・初動対応を実際に機能させること、それが出発点になります。外部への内部告発に発展する前に、社内でいかに受け止めるかという設計に投資することが、企業を守る最初の一手です。NaLaLys では、通報制度の実効性を高めるための手段として、AIを活用した通報窓口の提供や、制度設計の伴走支援を行っています。何から始めるか迷っている場合は、まず自社の窓口が「実際に使われているか」という問いを起点に点検してみることが望まれます。

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