2026/07/07

解説

内部通報制度の作り方。導入の5ステップと形骸化させない運用の実務ポイント

内部通報制度の作り方。導入の5ステップと形骸化させない運用の実務ポイント

内部通報制度の構築を任されたものの、「何から手をつければよいかわからない」という状況に直面する担当者は少なくありません。窓口を設けるだけなのか、誰を責任者にするのか、どこまで規程に書き込むのか——検討すべき論点が多く、進める順序が見えにくいためです。

この記事では、内部通報制度をゼロから構築するための流れを、目的設定・体制決定・窓口設置・規程整備・周知の5ステップに整理し、それぞれの実務の具体・準備物・つまずきやすいポイントまで解説します。あわせて、導入後に制度を形骸化させないための運用立ち上げ期の点検ポイントと、AIを活用した通報窓口という選択肢も取り上げます。

この記事でわかること

  • 内部通報制度を導入する前に確認すべき人数要件
  • 内部通報制度を構築する5つのステップ
  • 公益通報対応業務従事者を指定する際の考え方
  • 社内窓口・社外窓口・匿名通報を設計する際の注意点
  • 導入後に制度を形骸化させないための運用ポイント

なお、内部通報制度そのものの定義や、公益通報者保護法の改正全体像については、内部通報制度の完全ガイドで体系的に整理しています。本記事は「どう導入し、どう機能させるか」という実務の進め方に絞って解説します。

目次

内部通報制度の導入を始める前に|押さえておきたい2つの前提

具体的な導入手順に入る前に、進め方を左右する2つの前提を確認しておくことが有効です。1つは「自社が体制整備義務の対象に当たるかどうか」、もう1つは「制度をつくること自体はゴールではない」という視点です。この2点を最初に押さえておくことで、各ステップで何を優先すべきかが見えやすくなります。導入で生じうる負担や注意点を先に把握しておきたい場合は、内部通報制度を導入するデメリット5選で解説しています。

押さえておきたい前提を整理すると、次のとおりです。

  • 常時使用する労働者数が300人を超える事業者には、公益通報に適切に対応するための体制整備が義務付けられている
  • 常時使用する労働者数が300人以下の事業者にも、努力義務として整備が求められている
  • 制度は「設置すること」ではなく「機能させること」がゴールである

体制整備義務の対象(常時使用する労働者数300人超は義務/300人以下は努力義務)

内部通報に対応する体制の整備は、常時使用する労働者数が300人を超える事業者、すなわち301人以上の事業者には義務、300人以下の事業者には努力義務として位置づけられています。この人数要件は、正社員だけでなく、アルバイト、派遣社員、契約社員等の非正規社員も含めて判断されると説明されています。ただし、実務上は「常時使用する労働者」に該当するかを確認する必要があるため、自社の雇用形態・勤務実態を踏まえて人数を整理することが重要です。

体制整備義務の根拠となる条文番号や、2025年6月11日に公布され、2026年12月1日に施行される令和7年改正公益通報者保護法の具体的な内容については、詳細は公益通報者保護法 改正 企業対応ガイドで確認できます。改正の詳細や義務の範囲の変化についても同ガイドであわせて確認することが望まれます。

「制度をつくること」自体がゴールではない

導入を進めるうえで最も誤解されやすいのが、「窓口を設置すれば対応完了」という捉え方です。制度を整えても、従業員に知られていなかったり、通報しても何も変わらないと受け止められていたりすれば、制度は実質的に動かないまま形だけのものになりかねません。

リスクの早期把握という観点からは、努力義務にとどまる規模の事業者であっても制度整備の意義は大きいといえます。導入の出発点では、「つくること」と「機能させること」は別の課題であると認識しておくことで、各ステップで優先度を見誤らずに進めやすくなります。後半では、運用を軌道に乗せるための立ち上げ期の点検ポイントも取り上げます。制度の実効性や形骸化の構造的な要因を体系的に理解したい場合は、内部通報制度の完全ガイドを参照することが有効です。

内部通報制度の導入手順【5ステップ】

内部通報制度の構築は、行き当たりばったりで進めると論点の抜け漏れが生じやすくなります。実務では、次の5つのステップを順序立てて進めることで、全体像を見失わずに整備を進められます。

  1. STEP1|経営層が導入の目的と基本方針を定める
  2. STEP2|対応責任者・担当部署を決める(公益通報対応業務従事者の指定)
  3. STEP3|通報受付窓口を設置する(必要に応じて複数の通報経路を用意)
  4. STEP4|対応フローと内部規程を整備する
  5. STEP5|従業員への周知・教育を行い運用を開始する

各ステップには、それぞれ「目的」「実務の具体」「準備物・成果物」「よくあるつまずき」があります。以下では、ステップごとに何を進めればよいかを具体的に見ていきます。

STEP1|経営層が導入の目的と基本方針を定める

最初のステップは、なぜ内部通報制度を導入するのか、その目的と基本方針を経営層が言語化することです。目的が曖昧なまま窓口だけを先に設置すると、現場任せの運用になり、形だけの制度に陥りやすくなります。

導入の目的としては、たとえば以下のような観点を整理することが考えられます。

  • 不正やコンプライアンス違反の早期発見
  • 通報者の保護と、安心して声を上げられる環境づくり
  • 不正やコンプライアンス違反を早期に把握・是正し、重大化や社会的信用の低下を防ぐこと
  • 調査・是正まで一貫して対応できる体制の構築

これらを踏まえて、制度の位置づけや基本姿勢を示す基本方針文書を作成し、経営トップからのメッセージとして社内に発信することが望まれます。準備物・成果物としては、基本方針文書とトップメッセージが挙げられます。トップが制度の必要性を理解し、「通報を受け止める」という姿勢を明確に示すことが、後の周知や運用の土台になります。

よくあるつまずきは、目的の整理を現場の担当部署だけに委ねてしまうことです。経営層の関与が薄いまま立ち上げると、制度の優先度が社内で伝わらず、形骸化の起点になりやすくなります。

STEP2|対応責任者・担当部署を決める(公益通報対応業務従事者の指定)

次に、通報を誰が受け付け、どの部署が調査・是正まで管理するのかという責任体制を決めます。受付後の対応が宙に浮かないよう、責任者と担当部署を明確にしておくことが重要です。

このステップで重要になるのが、公益通報対応業務従事者の指定です。常時使用する労働者数が300人を超える事業者では、公益通報を受け、調査し、是正に必要な措置をとる業務に関与し、公益通報者を特定させる事項を取り扱う担当者について、公益通報対応業務従事者として指定する必要があります。

300人以下の事業者についても、努力義務として、実情に応じた体制整備に努めることが求められます。指定された公益通報対応業務従事者には、正当な理由なく公益通報者を特定させる事項を漏らしてはならない守秘義務が課されており、違反した場合には刑事罰の対象となります。指定にあたっては、従事者であることが客観的に明確になるよう、指定書、社内規程、通知メール等の記録に残る方法で明示し、守秘義務の内容もあわせて周知しておくことが望まれます。

誰を指定すべきかについては、次のような観点で検討することが有効です。

  • 通報内容を独立した立場で扱えるか(被通報者になり得る部署からの独立性)
  • 受付から調査・是正までの実務を遂行できる知識・経験があるか
  • 経営幹部が関与する不正にも対応できるよう、監査役、監査等委員、社外取締役、親会社・グループのコンプライアンス部門、外部専門家など、通常の業務ラインから独立した報告経路を確保しているか

準備物・成果物としては、従事者であることを明確にする指定書・社内規程・通知記録等と、守秘義務に関する取り決めが挙げられます。よくあるつまずきは、通報者と利害が対立し得る部署の担当者をそのまま責任者にしてしまうことです。独立性を意識して指定することで、通報者がためらいを感じにくい体制を整えられます。誰を指定すべきかの考え方は、本記事末尾のよくある質問でも補足します。

STEP3|通報受付窓口を設置する(必要に応じて複数の通報経路を用意)

責任体制が決まったら、実際の通報を受け付ける窓口を設置します。ここでのポイントは、通報者が安心して利用できる受付窓口を設計することです。実務上は、社内窓口に加えて、社外窓口やWebフォームなど複数の通報経路を用意することで、通報者が利用しやすい環境を整えやすくなります。通報者が「どの経路なら安心して使えるか」を自分で選べる状態にしておくことは、制度の利用しやすさを高めるうえで有効です。

窓口には、大きく分けて社内窓口と社外窓口があります。それぞれの特徴を概要レベルで整理すると、次のとおりです。

  • 社内窓口:自社の担当部署が受け付ける。対応が迅速で社内事情を踏まえやすい一方、「上司や人事に知られるのではないか」という不安を持たれやすい
  • 社外窓口:外部の弁護士や専門会社などが受け付ける。心理的なハードルが下がりやすく、独立性を確保しやすい一方、社内事情の把握には連携が必要になる

実務上は、社内窓口のみならず、外部の弁護士や専門会社等による社外窓口を組み合わせることも選択肢になります。どちらをどう組み合わせるか、社外窓口をどの形態に委託するかといった選び方の詳細は、内部通報窓口の選び方|社内・弁護士・代行・システム窓口の比較で各形態を比較しながら解説しています。窓口形態の検討段階ではあわせて参照することが有効です。

なお、窓口の連絡手段についても、対面のみに限定すると心理的負担が大きくなりやすいため、メール・電話・Webフォームなど複数の手段を用意しておくことが有効です。また、匿名通報に対応できる仕組みを用意しておくことも、通報者の心理的ハードルを下げるうえで有効です。ただし、匿名受付を行う場合には、追加確認や調査に必要な連絡手段をどのように確保するかもあわせて設計しておく必要があります。

準備物・成果物としては、通報受付窓口の受付担当・連絡先の明記、通報方法の一覧、必要に応じた社外窓口の委託契約やWebフォーム等の設定情報が挙げられます。よくあるつまずきは、社内窓口のみを設置したことで「上司や人事に知られるのではないか」という不安が解消されず利用が伸びないケースです。また、社外窓口を設けたものの社内との連携方法を決めていないため、受け付けた通報の調査が止まるといった事態も起きやすい点に注意が必要です。

また、社内・社外・併用それぞれの設置パターンや費用の目安、運用ルールに絞って確認したい場合は、内部通報窓口の設置と運用|社内・社外・併用の3パターンと費用・運用ルールが参考になります。

STEP4|対応フローと内部規程を整備する

窓口を設けたら、受け付けた通報をどう処理するのかという対応フローを定め、その内容を内部規程として明文化します。規程がないまま運用を始めると、担当者によって対応がばらつき、通報者からの信頼を損なう要因になりかねません。

導入時に整備しておきたい内部規程の主な項目を整理すると、次のとおりです。

  • 通報の受付方法と受付窓口(社内・社外・匿名の扱い)
  • 受付後の事実確認・調査の進め方と担当範囲
  • 通報者の保護(不利益取扱いの禁止・特定情報の管理)に関する定め
  • 調査結果に基づく是正措置の決定プロセス
  • 通報者・関係者へのフィードバックとフォローアップ
  • 記録の保存と秘密保持の取り扱い

このステップで押さえておきたいのは、あくまで「導入時に何を整えておくか」という骨格づくりに焦点を当てることです。実際に通報を受けた後の受付から調査・是正・被通報者対応までの具体的な進め方については、内部通報の調査方法と対応手順で受付から是正まで詳しく解説しています。運用段階での調査実務を確認する際には、こちらを参照することが有効です。以降では、規程に何を盛り込むべきかという整備の観点に絞ります。

準備物・成果物は、内部通報規程と対応フロー図です。よくあるつまずきは、受付の入口だけを定めて、是正やフォローアップまでの流れを規程に書き込まないことです。出口まで設計しておくことで、通報が「受け付けたまま放置される」事態を避けられます。

STEP5|従業員への周知・教育を行い運用を開始する

規程と窓口が整っても、従業員に知られていなければ通報は届きません。最後のステップは、制度の存在と使い方を従業員に周知し、教育を行ったうえで運用を開始することです。

周知・教育の具体策としては、次のような方法が考えられます。

  • 新入社員研修・階層別研修への組み込み
  • 通報窓口の連絡先を記載した定期的なメール配信や社内掲示板への掲示
  • イントラネットやポータルサイトへの規程・窓口情報の常設掲載
  • 制度の趣旨や「通報は不利益に扱わない」という方針を示すトップメッセージの発信

準備物・成果物としては、周知資料・研修コンテンツと、運用開始チェックリストが挙げられます。運用を開始する前には、チェックリスト的に準備状況を確認しておくことが望まれます。たとえば「周知が全部署に一巡したか」「窓口がテスト通報で問題なく機能したか」「受付後の連絡フローが担当者間で共有されているか」といった点です。

よくあるつまずきは、「規程はあるが従業員が窓口の存在を知らない」という状態のまま運用開始としてしまうことです。制度を整えた直後こそ、周知の徹底が利用の前提になります。ここまでの5ステップを終えた段階で、制度は「つくり終えた」のではなく「動かし始めた」状態に立つことになります。

内部通報制度の導入前チェックリスト

制度の運用開始前には、少なくとも次の項目を確認しておくことが有効です。

  • 体制整備義務の対象となる従業員数を確認したか
  • 対応責任者・担当部署を決めたか
  • 必要に応じて公益通報対応業務従事者を指定したか
  • 通報受付窓口と連絡方法を明確にしたか
  • 匿名通報を受け付ける場合の追加確認フローを決めたか
  • 通報受付後の調査・是正・フォローアップの流れを定めたか
  • 通報者の不利益取扱いを禁止するルールを明文化したか
  • 従業員への周知・教育を実施したか
  • 運用開始後の見直し頻度と担当者を決めたか

導入後に運用を軌道に乗せる|立ち上げ期に押さえる運用のポイント

STEP5で運用を開始した直後は、制度が「動く状態」に乗っているかを担当者が点検する時期です。立ち上げ期に点検したいポイントを整理すると、次のとおりです。

  • 通報が届きやすい状態になっているか
  • 匿名通報を受け付ける場合に、追加確認できる受付フローになっているか
  • 被通報者への配慮が運用ルールに織り込まれているか
  • 運用を振り返り規程に反映する仕組みが決まっているか

運用開始後、まず「通報が届きやすい状態か」を点検する

運用を開始したら、まず通報が物理的に届きやすい状態になっているかを確認します。周知後に窓口へのアクセスが想定経路で起きているか、通報者が連絡先にたどり着ける導線になっているかを観察することが、開始直後の実務点検の起点となります。必要な通報が届かない、初動が遅れる、対応が属人化するといった悩みは、立ち上げ期に現れやすいパターンです。

「通報が来ない=問題がない」と早合点せず、届く導線が整っているかの点検に集中することが望まれます。件数ゼロの構造的な解釈は内部通報制度の実態を最新調査で解説に委ねます。

匿名通報を受け付ける場合は、追加確認できる受付フローにしておく

匿名通報を受け付ける場合、通報者の心理的ハードルを下げられる一方で、追加の事実確認が難しくなりやすいという課題があります。そのため、匿名受付を採用する場合には、導入時点で「匿名のまま追加の質問を返せる導線」を受付フローに用意しておくことが有効です。

被通報者への配慮を運用ルールに織り込んでおく

通報があったという事実は、調査のきっかけであって、事実認定そのものではありません。通報者の保護と同時に、通報された側(被通報者)の権利にも配慮する姿勢を、運用ルールや規程に最初から織り込んでおくことが重要です。

立ち上げ時点で「公正な調査が終わるまでは被通報者を一方的に不利に扱わない」という原則を規程に明文化しておくことで、後の対応の一貫性を保ちやすくなります。調査の進め方そのものの詳細は内部通報の調査方法と対応手順で確認できます。

運用を定期的に振り返り、規程に反映する仕組みを決めておく

制度は一度つくったら終わりではなく、運用しながら見直していくものです。立ち上げの段階で、「いつ・誰が運用状況を振り返り、規程を見直すのか」という点検サイクルをあらかじめ決めておくことが望まれます。

たとえば、年に一度は受付件数や対応状況を振り返り課題があれば規程に反映する、といった担当・頻度のルール化です。

AI・システムを活用した内部通報窓口という選択肢

ここまで見てきた運用上の課題——担当者への属人化、初動の遅れ、必要な通報が届きにくいこと——は、限られた人員で内部通報制度を回す企業にとって共通の悩みになりがちです。こうした課題を軽減する選択肢の一つとして、AIを活用した通報窓口があります。

たとえば次のような特徴をもつシステムがあります。

  • システム設計によっては、AIが一次受付や追加ヒアリングを支援し、時間帯に左右されず通報を受け付けられる体制を整えやすくなる
  • 通報内容を5W1Hに沿って整理することで、受付段階で必要情報の不足に気づきやすくなる
  • 受付状況を一元的に管理でき、対応の進捗が担当者間で共有しやすくなる
  • 匿名通報に対応した設計を採用することで、通報者の匿名性に配慮しながら、追加確認や継続的なやり取りを行いやすくなる

NaLaLys では、こうしたAIを活用した通報窓口を提供しています。少人数で運用を担う企業や、これから制度を立ち上げる企業にとって、属人化や初動遅れといった課題を軽減する手段として検討の余地があります。詳細はAI通報窓口の製品ページで確認できます。

なお、AIやシステムを活用する場合でも、公益通報者保護法上求められる体制整備、従事者の指定、秘密保持、利益相反の排除、通報者保護、調査・是正の判断責任までが自動的に充足されるわけではありません。システムはあくまで受付・整理・進捗管理等を支援する手段であり、最終的には事業者として適切な運用体制を整える必要があります。

内部通報制度の導入に関するよくある質問

内部通報制度の導入を検討する担当者が実務で迷いやすい点について、3つの質問と回答を整理します。

内部通報制度の導入にはどのくらいの期間・コストがかかりますか?

導入にかかる期間とコストは、企業の規模、拠点数、窓口形態、規程整備や研修の範囲によって変動します。社内担当者のみで運用する場合、外部の弁護士や専門会社に委託する場合、システムを利用する場合とで、必要な準備や費用項目が異なるため、自社の体制に応じて見積もる必要があります。

一般的には、次のような要素が期間・コストを左右します。

  • 対象となる従業員数と拠点数
  • 社内窓口・社外窓口・システム窓口のどれを、どう組み合わせるか
  • 規程整備や従業員教育をどこまで自社で行うか

具体的な金額や標準的な期間は事業者ごとに異なるため、まず自社の従業員規模・拠点数・窓口形態の方針を整理したうえで、それぞれの形態の提供事業者に見積もりを確認することが実務上の手順となります。窓口形態ごとの特徴比較は内部通報窓口の選び方|社内・弁護士・代行・システム窓口の比較でも整理しています。

社内窓口と社外窓口は、どちらを設ければよいですか?

法令上、すべての事業者に社内窓口と社外窓口の両方の設置が一律に義務付けられているわけではありません。ただし、社内窓口は迅速な対応や社内事情の把握に強みがあり、社外窓口は独立性や心理的安全性を確保しやすいという特徴があります。そのため、企業規模やリスク、従業員の利用しやすさを踏まえ、両者を組み合わせることは有効な選択肢です。

必要に応じて複数の通報経路を設け、通報者が利用しやすい方法を選べるようにしておくことは、制度の使いやすさを高めるうえで有効です。それぞれの形態の詳しい比較や選び方は、内部通報窓口の選び方で解説しています。

公益通報対応業務従事者には誰を指定すべきですか?

常時使用する労働者数が300人を超える事業者では、公益通報を受け、調査し、是正に必要な措置をとる業務に関与し、公益通報者を特定させる事項を取り扱う者を、公益通報対応業務従事者として指定する必要があります。300人以下の事業者についても、努力義務として、実情に応じた体制整備に努めることが求められます。受付担当者だけでなく、調査・是正対応に関与する者が対象となる場合もあるため、実際の対応フローに沿って指定範囲を整理することが重要です。被通報者になり得る部署から独立した立場で、通報内容を適切に管理できる担当者が望ましいといえます。

経営幹部が関与する不正にも備え、監査役や社外取締役など、通常の業務ラインから独立した報告経路を確保しておくことも有効です。指定にあたっては、従事者であることが記録に残る方法で明確になるようにし、守秘義務の内容もあわせて周知しておくことが望まれます。

まとめ|「つくって終わり」にせず、機能する制度へ

内部通報制度の構築は、次の5つのステップで進められます。

  1. STEP1: 経営層が導入の目的と基本方針を定める
  2. STEP2: 対応責任者・担当部署を決め、必要に応じて公益通報対応業務従事者を指定する
  3. STEP3: 通報受付窓口を設置する(必要に応じて複数経路を用意)
  4. STEP4: 対応フローと内部規程を整備する
  5. STEP5: 従業員への周知・教育を行い運用を開始する

そして導入後は、通報が届きやすい状態か、匿名通報を受け付ける場合には追加確認の導線が整っているか、被通報者への配慮や運用を見直す仕組みがあるかを点検していくことが重要です。

内部通報制度は、設置することがゴールではなく、機能させ続けることがゴールです。導入はゴールではなくスタートと捉え、運用を通じて少しずつ実効性を高めていく姿勢が望まれます。

制度を整えた後に実際どのような問題が起こりうるかは、内部通報の事例10選をタイプ別に紹介。通報後の対応と企業が学ぶべきポイント で具体的に確認できます。内部通報制度の全体像や公益通報者保護法の改正対応を確認したい場合は、まず内部通報制度の完全ガイドをご覧ください。

実際に窓口運用を効率化したい場合や、匿名通報・追加ヒアリング・進捗管理の仕組みを整えたい場合は、NaLaLysのAI通報窓口もあわせてご確認ください。メールや電話内容をExcelへ転記するような作業負担も軽減できるため、内部通報制度を「設置だけで終わらせない」運用につなげやすくなります。

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